薬剤師が抱える職場でのよくある悩みと解消法

みんなが考える将来のビジョン

「調剤併設型ドラッグストアの役割と薬剤師としてのやりがい」

今回インタビューに答えてくれた川田さん(29歳女性)は病院隣接の調剤薬局から、調剤併設型ドラッグストアに転職した経歴を持っています。過去の経験を振り返りながら、薬剤師としてのやりがいや今後のキャリアプランなどをお聞きしました。


――川田さんが医療に携わるきっかけは何だったのでしょうか?

きっかけは本当に些細なもので、単純に子供のころから「かっこいいな」と思ってたんです。(笑)幼少期の私は病弱で度々お医者さんの世話になってました。もちろんお医者さんにかかるたびに、病院に行って、その後お薬をもらう流れだったわけですけど、そこで薬剤師さんが白衣を着て陳列されたとんでもない量の薬に囲まれた中で働く姿にあこがれを持ちました。お医者さんと違って薬剤師の方は直接医療行為を行うこともないので、子供心に恐怖心を抱く対象でなかった点も大きかったのかもしれません。

とにかく、きっかけはそんな些細な「憧れ」からでしたが、年齢を重ねて薬剤師さんがどういった役割を持ち、どんな仕事をしているかを知っていく過程で「自分もなりたい!」という気持ちは日増しに強くなっていったように思います。一言で言えば、「健康や薬、病気のことを相談できる身近なパートナーになりたかった」というようなイメージです。


――薬剤師になった当初の話を教えてください。

私が最初に入ったのは調剤薬局です。いわゆる大病院のすぐ隣にあるお客様がほぼ固定されているような調剤薬局でした。入った理由については漠然としていて、薬剤師として現場と働いた経験がなかったため、とりあえずスタンダードな薬剤師の仕事に就いてみようと考え、そちらを選びました。結果的に3年ほど働いて診療科目の処方箋は一通り勉強できましたし、薬剤師の基本をある程度肌で感じられたので、自分にとってはプラスになったと思います。


――その後、現在の調剤併設型ドラッグストアに転職した理由は何でしょうか?

当時に職場に大きな不満があったわけではありません。ただ、薬剤師としての経験を積み、自分の役割を冷静に見つめられるようになったころから、「自分の理想と今の現実」にギャップを感じるようになってきたんです。薬剤師の役割ってこれだけなんだろうか?もっとできることがあるんじゃないか?というシンプルな疑問が日増しに強くなっていきました。

ご存知の通り、調剤薬局では“調剤業務”“服薬指導”“薬歴管理”が主な業務となります。要するに、医療機関の医師の方が出す処方箋に従って患者さんにお薬を出したり、薬の服用方法・効能・保管方法を説明することなどが業務な大半を占めるわけです。私自身、薬剤師とはそのような仕事をするのが役割だと考えてきました。

ですがある日、自分が調剤併設型ドラッグストアに足を運んだ時、そこで働く薬剤師の方と自分の当時の仕事との大きな違いに気づきました。調剤併設型ドラッグストアでは、前述した処方箋関連の業務だけでなく、OTC医薬品(薬局やドラッグストアなどで自分で選んで買える「要指導医薬品」と「一般用医薬品」のこと)にも携わらなければなりません。

つまり、処方箋関連の知識+OTC医薬品の知識も必要になるわけですね。単純に自分と比較して「すごいところで働いてるな」と思いましたし、何より興味をそそられました。調剤併設型ドラッグストアなら「自分がまだ知らない薬剤師の役割や可能性が見つかるんじゃないか」と。
その後すぐに転職活動を始め、店舗見学を通して自分の理想と最もフィットしそうな現在の職場に入社することが出来ました。


――現在の調剤併設型ドラッグストアで実際に働いてみた印象や気づいた点を教えてください。

まず言っておきたいのは「私が持っていたイメージと全く違う職場だった」という点ですね。もちろん悪い意味じゃありません。良い意味で予想を裏切られたとでも言いますか…。入社する当初、自分の中では調剤併設型ドラッグストアで働く役割は「販売員」としての側面が強いと考えていたんです。具体的に言えば以前の調剤薬局での仕事は、医療の延長線であり「薬剤師は医療従事者」、調剤併設型ドラッグストアは市販の医薬品や健康食品がメインだから「薬剤師も医療従事者というより販売員としての役割を担う部分が大きいのだろう」とイメージしていたわけです。

ところが実際に現場に入ってみると、お客様からとにかく相談される機会が多かったんですね。症状とそれに合う薬を相談されたりするのはもちろん、健康全般に関する相談や、医薬品の併用、処方箋との組み合わせなど、相談内容はお客様一人一人本当に千差万別でした。しかもそのすべてが健康や病気に直結するものです。薬剤師として、より正確で有意義なアドバイスを行うことがお客様一人一人の健康、ひいては満足度につながるのだと現場経験を積むたびに思い知らされました。

ただ、驚きと同時にかねてより抱いていた「自分がまだ知らない薬剤師の役割や可能性」に気づけたのも事実です。この場所でなら薬剤師がもっと身近な存在となり、自分の専門知識をこれまで以上に役立てられると確信できたんです。


――今後のキャリアプラン、将来のビジョンについてはどのようにお考えですか?

今の私の中で何より大切にしたいのは、お客様がどうすれば満足するか、お客様に対しての最善の対処法は何か、という部分です。おそらく今後自分がどのようなキャリアを歩んでいくにしてもこの軸はぶれないでしょうし、ぶれてはいけないと思います。

その為に最近は、例えば体験型勉強会や接客シミュレーションに積極的に参加するよう心がけています。ありがたいことに今の職場では実践的な研修の場が数多く用意されているので、実際に販売している商品の使用体験をしてみたり、従業員同士で接客や商品説明のシミュレーションをしたりして、より現場で活かせる経験を積めるよう心がけています。

ただし、お客様の満足度は商品そのものや接客に対する満足度だけでイコールとは言えません。来店した際の居心地や使い勝手の良さなど、あらゆる視点からお客様の感覚や印象を感じ取ることが大切だと考えています。具体的には待ち時間の解消、後発医薬品の推進、現場全体のコミュニケーション力の向上などですね。もちろんこういった取り組みは私個人の努力や成長だけでなく、店舗全体の連携、個々の意識、本部との意思疎通などがスムーズでなければ実現できません。

ですから当面の目標は、まず自分がいる店舗で実現できることに取り組みながら、従業員同士の考えや価値観を共有しあい足並みをそろえることだと考えています。

幸いなことに共に働く仲間には恵まれているように感じていますので、これからも固定概念にとらわれ過ぎず、常にお客様視点に立った最適なサービスを提供するため姿勢を忘れないようにしたいと思います。

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